断裁のあれこれ


裁断といえば良いのになぜか「断裁」と呼ばれています
子供の頃から聞きなれている私達はともかく,紙の業界以外の方から見れば「変な呼び方をするなあ」と思われるのが自然でしょう。

指定の寸法に裁断するのは当然のことなのですが,考え方によっては意外に難しいものです。   

まず寸法に対する精度の問題があります。

仮に仕上り寸法を 250mm x 350mmとしましょう。 機械に組み込まれているデジタルスケールは 1/10mmの表示ですから、良く整備された機械であれば 5/100mm 以内の精度で裁断の環境ができます。しかし機械に載っている紙は柔らかいものですから、後ろから押したとおりに動いてくれるとは限りません。その上これを裁断する刃物の切れ味が関係してきます。取り替えた時は切れ味も良くきれいに切れたのに,裁断量が増えてくると刃先は丸くなり押しつぶしながら切るようになります。このような状態になると片刃の刃先は奥にある紙を引っ張り出すように切るので、同じ場所に載っている紙の寸法が少しずれることが起こるのです。

JIS規格では 1.5mm  の許容誤差があると聞いていますが、弊社では 0.5mm 以内に押さえるように努力しています。


 上にある画像はクラシックな断裁機ですが
紙がずれないように押さえるには上にあるハンドルをまわして押さえ櫛を下げ紙を押さえます。中央にある軸で押さえるので圧力は中央から離れるに従って僅かづつ下がってきます、この圧力の差が微妙に寸法に影響することもあります。最初にあった画像は現在主として使用中の機械ですが、これは油圧プレスで押さえ櫛の両端を押さえる仕組みになっています。二箇所で押さえることの有利さはあっても,やはり拠り微妙な誤差を消すことは難しいようです。
 次に製紙メーカーによる製造誤差の問題もあります。同じ規格寸法のはずが,メーカーによって,酷い時は同じメーカーの同じ紙が製造ロットが異なると寸法が違うことがあります。さらにこれは私達も紙の長辺が入る断裁機を持つまでは想像もしなかったことでしたが、隅の直角が出ていない紙が実に多いのです。端から 50cm 離れると直角の線から 1mm 程度ずれている紙は常識の範囲内と考えなければやっていけないのが現状です。
    弊社の裁断はこのずれを修正しながら仕上げています。
 細かく説明しましたが,これらの誤差はそれほど大したものではないのかもしれません。印刷機は「ハリ」と「咥え」を合わせておけば多色刷りでもしっかりと仕上がっています。私共の単なるこだわりに過ぎないのかもしれません。でも出荷するには納得のゆく製品を出したいと思っています。


dansai
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